第360回一心寺門前浪曲寄席へ行ってきました!

一心寺門前浪曲寄席 ほり
大阪には常設の浪曲小屋はありませんが、こちら、一心寺さんの南会所では毎月浪曲の定期公演が行われています。月に一回、だいたい土日月3日間の昼公演です。と、知ったような顔で言いながら初めて行ってきました。
会の存在はかなり前から知っていましたが、我が家から微妙にアクセスが悪くなかなか足が向きませんでした。浪曲の会ならもっと近くでときどきあるしわざわざ遠くへ行かんでも…みたいな。しかし、歴史ある会は風格が違いました。ご通家っぽい観客の暖かさ、ノリのよさ。演者の余裕。安心して芸に没入できました。行ってよかったです。

さすが老舗の定席、30年の貫録を見た!

会場入り口では、出番のない浪曲師のみなさんが普通に受付などスタッフの仕事をされています。どういう顔してチケットを買えばいいのかわかりません。場内は特に舞台が作り込まれているでもなく、最低限のテーブルと椅子、マイクなどが用意されているのみ。手作り感…。しかしそれが却ってこなれた貫録に見えてくるから場の空気というのは不思議です。
世話人さんらしき方の手慣れた司会で開演。
演者四人がたっぷり30分ずつ、中入りはなく、夢中で聞いているうちに2時間経っていました。

▼番組
『能登守と外記』真山隼人 曲師:沢村さくら
『阿波の踊り子』春野美恵子 曲師:沢村さくら
『日本の妻』真山一郎 オペレーター:真山幸美
『出世一番』京山幸枝若(代演) 曲師:一風亭初月

真山一郎『日本の妻』に思うこと

全演目の解説はどこかの御通家がされていると信じて、特に印象に残った『日本の妻』の感想だけ書きます。
真山一郎先生。
なんでこの人はこんな小さい小屋で唸っているんだろう。
歌手の中でも稀な正統派の高音美声。鳩ぽっぽ歌っても金が取れる声です。寸分の狂いもない音程、声量、それでいてふとしたところに一瞬聞く者を不安にさせるような揺らぎもあり、ただの「歌のうまい人」の域ではありません。さらに、人物の描き分け、真に迫る演技力。どこをとっても他に類を見ない至芸です。
専属オーケストラを引き連れて全国ドームツアーを打っていてもおかしくないのに、時代はそんなにも浪曲に興味がないんでしょうか。たしかに先生、御年65才だそうですが、芸風は85才ぐらい、ナチュラルに昭和40年代の空気を纏われています。でもそれでいいと思うけどなぁ。
さて、本日の外題『日本の妻』は、大東亜戦争に出兵し東南アジアで終戦を迎えた日本人兵士と、残された家族の数奇な運命を描いた物語です。
残された母、妻、幼子は「夫は戦死した」と聞かされて終戦を迎えますが、後年「実は生きていて他所に所帯を持ち、子供が四人もある」と知らされます。極貧の母子家庭で育った子はそんな者は父ではないと憤り、母と妻は生きていてくれた安堵もまざった複雑な気持ちを抱きます。そして昭和40年。彼が帰ってきたのです。
但し「一時訪日」として。
彼はインドネシアで終戦を迎え、戦後かの地に戻ってきたオランダ軍の捕虜となり、のちにはインドネシア兵に味方して対蘭独立戦争を共に戦ったのです。そして見事独立を勝ち取り、その功績ゆえにスカルノ大統領からインドネシア国籍が与えられていたのでした。同じ運命に身をゆだねた日本兵は実に200人にものぼったと言います。
妻子を捨ててよそに家族を作った。
その通りだが、運命に翻弄されながらままならぬ人生を懸命に生きた者を、誰が責められようか。
ふと思えば、たった数十年前まで、人生はこれほどままならぬのが常だったのかもしれません。

私は縁あって彼らインドネシア残留兵の逸話を知っていましたが、同世代やもっと若い人々にこの話は全くと言ってもいいほど知られていないでしょう。「東南アジアの日本人」と言えば、脊髄反射で「侵略戦争」とばかり教え込まれたせいです。
戦争の災禍を語り継ぐことは悪いことではありません。
しかし、日本兵と現地人の絆を語ることもまた同時に重要です。
外務省は(←突然すぎますか)軽々しく「二国間の絆」みたいなふんわりとしたことばかり言って、民と民の具体的な縁についてはほぼ言及しません。おかげで、私は長い間日本人がなぜインドネシアで尊敬されているのか、どうしても理解できませんでした。お金を持っているから人が寄ってくるんだとばかり思っていました。
しかし、真の理由(の一部)を知ったとき、そんな先祖に恥じない日本人でなければならないと感じたのです。
彼らは決して初めから「インドネシアの独立を助けよう」と思ってかの地に渡ったわけではありません。祖国と家族を守るために心ならずも旅立ち、しかも祖国防衛はならず、やり場のなくなった愛郷心闘争心をせめて目の前の異国の民のために役立てようとしたのでしょう。

私は数か月後にインドネシア渡航を控えています。このタイミングでこの外題を生で聞けたことに、なんとなく運命のようなものを感じましたが気のせいでしょうか。

さて、そんなためになる会が、大人2,500円。3日間通し券なら6,000円。安くない?
来月は30周年の記念だそうです。通しで行きたいけど先約があって一日しか行けないよ。いつか通しで行けますように。

ほんまよく失敗する!

肝心の浪曲が大満足だったのですべて良しなんですが、今日もいろいろ失敗しました。

【失敗1】家を出るのが遅れる

道中においしいカレー屋さんがあると友達に教えてもらいぜひランチはそこで…!と意気込んでいましたが、ぼんやりしていて家を出るのが10分遅れ、道に迷って10分遅れ、食べる時間がなくなりました。
浪曲会に遅れては本末転倒、カレーは諦め近くのコンビニでおにぎりと炭酸水を購入。イートインの消費税額2%を惜しんで公園でイートアウトする50歳であった。くやしい。

【失敗2】帰りに寄る店を間違える

終演後、おなかが空いていたので、喫茶店かパン屋さんでおやつを食べたくて Google マップ でめぼしいお店を探しました。が、そこ辿りつく前に、ふと目についた小洒落カフェがうっかり入ってしまったのです。
おしゃれな店は基本回避して生きています。若い女の子集っていればなおさらです。あいつらとは根本的に価値観が異なるからです。しかしその時たまたまでしょうか、お洒落な店内に似つかわしくないおっさんの姿が比較的多く見受けられたんです。完全な偏見ですが、おっさんとはマジでうまい店かマジで安い店にしか生息しません。ひょっとしてここはおいしいんじゃないか。
偏見に基づく期待から、決して安くないケーキとコーヒーをついオーダーしてみました。案の定、いや豈図らんや、この場合どっちやねん、ほんっっとうにどうでもいい味でした。隣のコンビニでロールケーキ買うたらよかったと思うほどに。おいしいは正義。お洒落は(概ね)不正義。
高いものがまずいと本当に腹が立ちますね。

ねこちゃんでも見て心を落ち着けましょう。かわええ!

パインアメさんの前を通りました

去年のアレ(※)以来、すっかり縁起物となったパインアメ。
寄席帰りに、本社と思しき建物=パワースポットの前を通ったので、失礼ながら無断で撮影してきました。ありがたや。玄関付近にビールかけの時に使われたグッズが展示されているようでしたが、さすがに覗き込んで写真を撮るほどの厚かましさは持ち合わせませんでした。分別ある大人でよかった。
※数年経ったらたぶん誰も覚えていないので書いておきますが「去年のアレ」とは2023年の阪神タイガースの日本一です。岡田彰布監督の試合中の糖分補給源としてバズったのが「パインアメ」でした。懐かしいね。すでに。

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